1980年のショパンコンクールで賛否を分けて、まさかの落選。
審査員で同コンクールの優勝者であるマルタ・アルゲリッチが激怒し
以降、審査員を降りたという伝説がある人。
アルゲリッチに「この人は天才よ!」という言葉 によって、たちまち世界的に名を知られることになった。
まさに、ポゴレリッチ事件。
そんな伝説のピアニスト
イーヴォ・ポゴレリッチの演奏会へ。
【プログラム】 2016/12/10
ショパン: バラード第2番 ヘ長調 op.38 ショパン: スケルツォ第3番 嬰ハ短調 op.39 シューマン: ウィーンの謝肉祭の道化 op.26
モーツァルト: 幻想曲 ハ短調 K.475 ラフマニノフ: ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 op.36
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【プログラム】 2016/12/13
(共演:オレグ・カエターニ指揮、読売日本交響楽団)
ラフマニノフ: ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18
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2公演行きましたが、まぁ驚きの数々!!
この世に「常識」も無ければ「標準」や「お手本」もないのかもしれない、
と
思ってしまうような演奏でした。
物理的に言ってしまえば、
ピアニッシモと書かれているところをフォルティッシモに
テンポが速いところはゆっくりと、ゆっくりなところは速く
レガートはスタッカートに
しかし、それもまったく気にならないどころか
新たな解釈が
私たち観客を魅了。
彼の記事で以下のようなことを書かれていました。
〉今でもお客さま方は概ね、このショパン・コンクールの時のように賛否わかれます(よね?)。 大雑把に言ってしまえば、それはポゴレリッチが私たちのよく知っている曲をいったん解体し、再構成してしまうからです。買い与えられたおもちゃを分解して、組み立て直す子供のように。 これが普通の子供ならば、壊してしまったら元に戻すことは難しいですが、天才は戻せるどころか、それ以上に一段も二段も次元の違う凄いものに組み立て直してしまいます。
ポゴレリッチのピアノは、聴いている私たちの「常識」をあざ笑うように、
誰も見たことのない「美」と「真実」で聴衆を圧倒します。
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うーーん!
誰も見たことのない「美」と「真実」、、、この言葉、納得です・・・!!
彼が類稀ない天才だということが、書かれています。
ただ、確かに
賛否は分かれるでしょうね。笑
私はピアノを多少弾く人間なので
その驚きの解釈に最初は戸惑いましたが、
音楽に正解はない、美しさに規則はない、音楽を感じる心に制限はない、
とポゴレリッチに言われているようで
気づけばすっかり彼の演奏にのめり込んでいました!!
ある意味で
こんなに器の広いピアニストはいないんじゃないかしら?!
今回、楽譜を持って登場しました。
決して暗譜をしていない、ということではなく
自分が創造した世界を忠実に演奏したい為だということがわかりました。
その証拠に
楽譜にはおびただしいほどの書き込み、楽譜が真っ黒になるくらい!
そこには彼の音楽にたいする誠実さと追求が現れています。
《破壊神と創造神と − イーヴォ・ポゴレリッチ》
なんてコンサートの見出しではうたわれておりました。笑
が
確かに、ポゴレリッチの演奏は、破壊的とも取れますが
創造的ともいえるでしょう。
けどそれは彼だからできることでもありますよね。
彼らしさ、彼の音楽にたいする想いから、ということがわかりました。
バラード2番の冒頭、、、
あんなに安らぎを感じられる美しさを持った出だしは無いでしょう!
そのまま天国に昇っていってしまうみたいだ〜〜>_<
宗教的な響きとも感じられましたが、圧感の響き!
あとはラフマニノフのピアノ協奏曲2番、第2楽章。
あんなに息を飲むほどの美しさ、神秘、を秘めた2楽章は初めて・・・!!
ポゴレリッチのインタビューでは
「とくに速度……、実は私はこの言葉が嫌いなんです。私にとってのそれは、単なる「速度」(speed)はではなく、「脈動」(pulse)という意味が含まれています。」
と答えている記事を見つけました。
彼の演奏を聴いていると、その意味もわかります。
決して、遅いというふうに感じないのが
ポゴレリッチマジック!!
自然の中にあって、脈を感じる演奏。
かなり衝撃を受けましたーー!!
もちろんサイン会にも参加。
バラードの楽譜にバッチリ
サイン会では私服に着替えたポゴレリッチが登場。
チェックのネルシャツの袖からピンクのTシャツが出ていて、グレーのニット帽にはピンクのボンボンがついていました。
か、可愛い系ファッション?!?!
ブラボー!と声をかけると「テンキュー!」とはっきり目を見て答えてくれました。
ステージの上でも、めちゃくちゃ丁寧すぎるお辞儀が印象的でしたので
奇人に見えて、案外、丁寧さを持った人なんだと思います。
若手のアーティストを応援する音楽祭やコンクールを作ったり、
音楽業界を盛り上げるような活動もされているそうです。
ピアニストは本当に豊作期ですね。